おみこしの窓 〜バンドのあれこれ〜

音楽、バンドに関する様々なアレコレを書いています

童貞の幽霊が目撃されない真の理由

ちょっと真面目に聞いて欲しいんだけど、童貞の幽霊ってこの世にいると思うか?

 

つい先日、友人とバーで飲んでいたらそんな話を急に振られて私は面を食らった。一体何の話をしているのかよく分からなかったからだ。いや、言葉の意味はわかる。童貞の幽霊がいるかどうかについて、真面目に話を聞いて欲しいと言うのはわかる。

 

だが、幽霊に童貞もクソもあるのだろうか?そんな純粋な疑問が頭をよぎる。彼は多少酔ってはいるものの馬鹿な男ではないし、その表情は真剣そのものだった。何か私の考えの及ばない真理に、辿り着いてしまっているのかもしれない。話を聞こう。そう言って私はウィスキーの入ったグラスを傾けた。

 

彼の言い分はこうだった。

幽霊を言葉で定義した時に、この世に強い恨みや未練を残したままに亡くなった者が、肉体が朽ちても魂だけの存在となり、幽霊と呼ばれるものになる。これが幽霊の定義であると。そこまでは私も理解が及ぶし、一般的にも正とされる考えだと言える。

 

彼は水割りを頼みながら更に話を核心に進める。ではその推論を前提とした時に、仮に童貞のまま死んだら未練が残り過ぎて幽霊になるのではないか?と彼は投げかけてきた。

 

なるほど。

 

確かに彼の言う通りだと私も感じた。

 

童貞のままでは死ねない。

まだ若かりし一人の童貞だった頃の私も、よくそんな話を友人とした。やはり生まれてきたからにはオッパイを揉みたい。童貞のままでは死んでも死に切れない。これほどスケベに対して強い思いを持っていたのは、生涯を通してもあの頃だけだった様に思う。


幸い、私はもう童貞ではないし無事に今日まで生きている身ではあるが、もし仮に若かりし童貞だった頃に死んでたら、この世にとてつもない未練を残して幽霊になっていたかもしれない。


例えば何らかしらの不慮の事故に遭い、もう助からない状況に晒されてしまったとする。息も絶え絶えに地面を這い蹲り、霞んだ目で空を仰ぎ、擦り切れた唇から、かすれた様な声を漏らす。せめて...せめてオッパイを揉んでから死にたかった....と。

 

それ以降、事故現場では幽霊となった男の姿が度々目撃される様になる。オッパイを揉みたいと呻く様な声が聞こえてくるとか。そこで写真を撮ると女性の胸元に白い手の様なものが映り込むとか。確かにそんなポルターガイストを起こしそうだ。

 

ともあれ。男に捨てられて自殺した女が化けて出られるなら、童貞を捨てられないままテクノブレイクした男も化けて出れるのが道理ではないだろうか。私は彼に力強く頷いた。もしもこの世に幽霊が存在するのならば、その中には童貞の幽霊も必ず存在する。と。

 

そんな私の返答に対して、彼の反応は芳しいものではなかった。腑に落ちない。彼はそう口火を切って続ける。それでは何故、童貞の幽霊の目撃談はないのか?と。即座に彼は異を唱え、水割りに手を伸ばした。グラスにまとわりついた水泡が、彼の指先を濡らす。

 

一理ある。そう感じて私は口を紡いだ。

 

確かに童貞の幽霊を見たなんて話を今まで一度も聞いた事がない。童貞の幽霊が存在すると仮定した場合、全く目撃談がないなんて事があり得るのだろうか?ウィスキーの氷を指で転がしながら、思考の海へと潜る。

 

例えばアダルトビデオを見てたら不可解なノイズが入り、画面の端に男優以外の男が写り込んでいた。気になって高名な霊媒師に見てもらった所、この世に強い未練を残して死んだ童貞の霊魂だと言われた。彼は生前、上原亜衣の大層なファンであったと。この手に握り占めている白い物体は、恐らく電マであると。そんな話があってもおかしくないのでないだろうか。


ではなぜ目撃談がないのか。シャイなのか?いや、イマイチしっくりこない。例えば、若い女性が夜な夜な枕元に立つ童貞の霊に悩まされるなんて話があってもおかしくないのに。何故、立たないのか。

 

枕元に立たない....。

 

うぅん....。

 

立つ?

立たない?

 

た.....

勃たない?

 

思わず口に漏らした私の肩を彼が掴んできた。それだ!と声を荒げる。なるほど、確かに。童貞故にいざという時に勃たない。よくある話と言えばよくある話だ。勃たないままでは幽霊と言えど人前に出られる筈もない。故に目撃談がなかったのだ。

 

童貞である事を隠している可能性もある。堰を切ったように彼が続ける。なるほど、確かに。俺、童貞ちゃうし。なんて幽霊になってもそんな見栄を張っている可能性、大いにあり得る。

 

長年の疑問にようやく仮説をぶつける事が出来た。彼は満足そうに頷き、乾いた喉を水割りで潤した。グラスにまとわりついていた水泡は、いつの間に消えていた。そんな歌です。聞いてください。Stand a ghost。

 

Stand a ghost / オミコシーズ - YouTube

 

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冷めやらぬ夜の情事を憧れ描く Stand a ghost 。キミの枕元で泣いてる俺をイかせてくれるのは...。

 

もしもこの世に幽霊が存在するのならば、その中には童貞の幽霊も必ず存在する。目には映らなくても、きっとこうして何気ない日常を過ごしている我々のそばで、息を潜めて佇んでいる筈だ。

 

ほら、あなたの後ろにも。