おみこしの窓 〜バンドのあれこれ〜

音楽、バンドに関する様々なアレコレを書いています

お釣りを渡す時に手を握ってくる店員さんにドギマギするって話

私がそっと手をさし出すと、おもむろに彼女がその手を両手で握り返してきた。その突然の行動に私は困惑する。しかし彼女はそれがさも当たり前の行為であるが様に、笑顔を絶やさない。触れ合っていたのはほんの一瞬の出来事だったが、私の心をかき乱すには十分過ぎる時間だった。

 

彼女は左手で私の手の甲を抑え、右手を掌に重ねる。一枚の紙切れと数枚の硬貨を手渡し、「120円のお釣りです」と囁いた。

 

こんな具合でお釣り渡す時に手を握ってくる店員さんに対して、いちいちドギマギしてしまうのは私だけだろうか。近所のスーパーやコンビニで、そこそこの頻度でこの様な店員さんに遭遇する。そんな日はあー、生きてて良かったと思う程度には癒される。独り身を拗らせ過ぎたのかもしれない。

 

これは純粋に店員さんが可愛いからドギマギしている訳ではなく、手を握ると言う行為を突然に赤の他人から繰り出される事態にドギマギしているのだと私は思う。手を握ると言うのは、少なくとも友達以上の特別な感情を抱く異性に対して行う行為と捉えるのが、一般的ではないだろうか。

 

では一般的にどの様な間柄の人物と、どの様なタイミングで手を握るのか。考察を深めてみる。

 

例えを出すとすれば、知り合ってから数回食事に行った女性がいるとする。何度目かの食事の際、お互いの緊張も和らぎ少し打ち解けた会話をした帰り道に、人通りの多いスクランブル交差点で彼女を見失う。慌てて周囲を見渡していると、不意に彼女に手を握られる。「ここにいますよ」と彼女は少し俯きながら歩きだす。

 

手を離すタイミングを見失って、そのまま歩きだすと不意に彼女の方から手を離す。一瞬、その事を残念に思うと「こうした方が握りやすいですね」と言って掌を合わせて指を交差させてきた。これは、、、恋人握りだ!

 

とまあこんな具合の頃合いが手を握るタイミングではないだろうか。いや、決して自分の理想のシチュエーションの話をしている訳ではない。あくまで1つの例を出したまでだ。分かりづらかったかもしれないので、もう一個例えを出してみる。

 

例えばクラスでちょっと気になっている女の子と夏祭りに出かけたとする。何人かの友人と来ていたが、既に逸れてしまった。人混みに押され、彼女とも離れてしまいそうになる。すると彼女が手を握ってきて「逸れたら困るから...」と少し俯きながら歩き出す。

 

人混みを抜けた所で逸れた友人を見つけ、咄嗟に手を離す。見つかって良かったねと彼女に声をかけると、はにかんだ笑顔で「まだ逸れたままで良かったのに」と呟いた。

 

とまあこんな具合の頃合いが手を握るタイミングではないだろうか。いや、違う。少し俯きながら歩くと言うシチュエーションに憧れている訳では決してない。まだ分かりづらかったかもしれないのでもう一個だけ例を出す。決して自分が書きたいからではない。

 

例えば職場であまり接点のなかった女性の同僚に突然夏フェスに誘われて、一緒に行くとする。普段会社で見るよりずっとカジュアルな彼女の雰囲気にドキッとする。夜になりステージまでの道のりを一緒に移動していると「足元気をつけてね。こっちこっちー」とおもむろに手を握ってくる。

 

困惑している私をよそに、彼女は手を繋いだまま暗い道のりを先導してくれる。夏の熱気に晒されて、お互いの肌が汗ばむ。彼女は特に何も喋らないのに、矛盾する様にその手が掌や指先に絡むついてくる。エロい。俺の人生史上最高にエロい手だ。

 

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とまあこんな具合の頃合いが手を握るタイミングではないだろうか。え?いや、違う。決して私の欲望にまみれた願望を吐露した訳ではない。本当だ。信じてほしい。土井亜紀は最高に可愛い。

 

話しがやや(やや?)逸れてしまったが、例えに出したような特別な関係性を築けていない赤の他人である店員さんから手を握られるのが、どれ程までに特異な状況かを理解頂けた事だろう。

 

しかしドギマギする私の心情など御構い無しに手を握ってくる店員さんは実在する。これは別に特別な感情がある訳ではなく、マニュアルに則った接客あるいは単なる癖の様なものだとは理解をしている。意識してしまう私の方に問題があるのだ。

 

しかし、この他人から手を握られると言う行為にドギマギしてしまうのは、心理学の観点からすれば極自然な人間らしい反応だとも言える。

 

いわゆる、パーソナルスペースの誤認識と同じ原理だ。相手のパーソナルスペースにワザと入る事により、相手に自分は親しい人だと誤認識させる恋愛テクニックの応用と捉えられる。手を握る事により、相手が自分にとってごく親しい人だと誤認識をしてしまうのだ。

 

つまり心理学の観点からすれば、手を握ってくる店員さんに対してドギマギしてしまうのは自然な現象だと解釈できる。ではこれが別に全然タイプではない店員さんにやられた場合にはどうなるのか。これは私に実体験があるのでそれを紹介しよう。

 

千葉県某所にて私は友人と屋台型の居酒屋で飲んでいた。お客さんが5人も入ればギュウギュウになる位の狭い屋台だ。お店は御歳70歳を迎えそうな勢いのママさん(と言うかお婆ちゃん)が一人で切り盛りしていた。

 

狭いカウンターに友人と三人並んで酒を飲む。というか、もう婆ちゃんも飲んでる。知らないおっさんも話に入ってきて、酒を奢ってもらったりなんかもした。婆ちゃんも勝手に飯を作って振舞ってくれたりしてた。

 

屋台にはお手洗いがなかった。私は近場のコンビニで済ましてしまおうと思い、席を立つ。すると婆ちゃんがカウンターから出てきて「便所はこっちだよ」と言って私の手をひいて歩き始めた。これは、、、恋人握りだ!

 

完全に不意を突かれた。困惑している私をよそに、彼女は手を繋いだまま暗い道のりを先導してくれる。夏の熱気に晒されて、お互いの肌が汗ばむ。彼女は特に何も喋らないのに、矛盾する様にその手が掌や指先に絡むついてくるなんて事までは流石になかったけども。

 

結論を話すと私は御歳70歳を迎えるお婆ちゃんにも、突然手を握られたらドギマギした。何とも強引に手を引く婆さんだった。やっぱり、独り身を拗らせ過ぎたのかもしれない。今日はそんなお話でした。